今回はChannel FireballからKai BuddeによるTeam Pantheon謹製のダークジェスカイについての記事を紹介します。

省略、意訳、行間の補足等を含みますので、是非原文(http://www.channelfireball.com/articles/team-pantheon-deck-tech-dark-jeskai/)もご覧ください。



以下翻訳



戦乱のゼンディカーのフルスポイラーが公開されてから、我々Team Pantheonもあれやこれやとプレイテストを重ねたが、結局はいつもの怠惰がたたって週末の大会結果を待つことにした。

Brian DeMarsの《ティムールの激闘/Temur Battle Rage》コンボに度肝を抜かされ、Andrew Cuneoがそれに《満月の呼び声/Call of the Full Moon》を加えていたと聞いて更に開いた口が塞がらなくなったが、何にせよ《ティムールの激闘/Temur Battle Rage》の力は本物だったのである。

《衰滅/Languish》や《命運の核心/Crux of Fate》で盤面を流した返しに、《僧院の速槍/Monastery Swiftspear》+《強大化/Become Immense》+《ティムールの激闘/Temur Battle Rage》のたった4マナで18点!負け!となってしまったのでは何ともいたたまれない。

《タイタンの力/Titan’s Strength》と《ティムールの激闘/Temur Battle Rage》の組み合わせでも12点ものダメージになるのだから、これで十分なことも多いだろう。

現在のプールには《僧院の速槍/Monastery Swiftspear》に代わる速攻持ちのクリーチャーも多く存在するため、コンボを揃えるのはもはやそう難しいことではなく、遅いコントロールデッキはその構成を考え直さざるを得なくなったはずだ。

次に答えを見つけなければならなかったのは、見違えるほどに様変わりしたマナベースについてであろう。

占術ランドに代わり鳴り物入りで登場したバトルランドは、フェッチランドから持って来れる2色土地という触れ込みで人々の話題をかっさらった。

このフェッチランドというものがいかにダメなメカニズムかということについてであればたいそうな長編記事が書けてしまうが、簡単に言ってしまえば、私はマジックがしたい訳でシャッフルやカットばかりをしたい訳ではないのだ。

全てのプレイヤーが12枚のフェッチランドを使っている環境が望ましいものでないのは誰の目にも明らかであろう。

モダンの為にフェッチランドを採録する必要があったのは解るのだが、それでもスタンダードにおいて2色土地をフェッチランドから持って来れるようにしたことについては、全くもって理解に苦しむところである。

とは言ったものの、やはりフェッチランドから2色土地を持って来れることの影響力はすさまじく、アンタップインするには基本土地を2つ以上コントロールしている必要があるという制約こそあるものの、その2枚の基本土地もフェッチランドから持って来れるのであるから些末な物でしかなかった。

Kent KetterがSCG Openで使ったデッキのマナベースを以下に紹介しておこう。


・5種の基本土地を各1枚ずつ
・現状5種あるバトルランドの5種類全てを各1枚ずつ
・ 5種のフェッチランドを各3枚ずつ
→以上25枚



後は《カマキリの乗り手/Mantis Rider》、《包囲サイ/Siege Rhino》、《白日の下に/Bring to Light》といった環境随一のパワーカードをこれでもかと詰め込んだら完成だ。

このマナベースで3ターン目《カマキリの乗り手/Mantis Rider》、4ターン目《包囲サイ/Siege Rhino》の動きが安定するとは思えないが、それでもフェッチランドとバトルランドの組み合わせがいかに強力かを示すには十分であろう。

友好2色を使うのであれば、2種類の基本土地を5枚ずつとバトルランドを3~4枚、フェッチランドを10~12枚入れれば3ターン目にしっかりバトルランドをアンタップインできるはずだ。

このマナベースであれば、友好2色それぞれのトリプルシンボルを要求する4マナのカード(例えば(1)RRRと(1)BBB)でさえも十分共存可能だろう。

上のマナベースであれば、24枚の土地で2色のマナカウントを20ずつ確保できてしまうのだから、その安定性にも納得がいくというものだ。

とはいえこれは有効2色にだけ言えることで、黒緑のような対抗2色であれば、《血染めのぬかるみ/Bloodstained Mire》から《燃えがらの林間地/Cinder Glade》持ってくる動きは悪くないものの、やはり有効2色には遠く及ばない。

ここまでマナベースが強固になってしまえば、後はそのマナベースで何をするかである。

《放浪する森林/Woodland Wanderer》は中々良いカードだが、6/6警戒トランプルですら《包囲サイ/Siege Rhino》の牙城を揺るがすには至らないだろう。

我々は《はじける破滅/Crackling Doom》や《白日の下に/Bring to Light》をタッチしたタイプのアブザンをいくつか考えてみたが、その調整の過程でこの環境には2つの大きな軸があることが分かった。


・ブロッカーを越えてなお4~5ターンのキル速度を叩きだす赤系のデッキ
・2ターン目に登場する《ヴリンの神童、ジェイス/Jace, Vryn’s Prodigy》

《究極の価格/Ultimate Price》や《絹包み/Silkwrap》を擁するアブザンであるが、それでもやはりこの両者を相手取るには心許ない。


人はドロースペルやそれをフラッシュバックできるプレインズウォーカーがいたとしたら、それらを愛でずにはいられないのが常であるから、我々が《ヴリンの神童、ジェイス/Jace, Vryn’s Prodigy》を使うのも至極当然な運びであったのだろう。

今回のプロツアーでJon Finkel、Shahar Shenhar、Ben Rubin、そしてこの私が駆ったジェスカイは最高の栄誉こそ得られなかったものの、中々の手ごたえを感じさせるものであった。

赤の軽量除去でアグロデッキの猛攻を挫き、同時に相手の《ヴリンの神童、ジェイス/Jace, Vryn’s Prodigy》を排除した上で、こちらも《ヴリンの神童、ジェイス/Jace, Vryn’s Prodigy》や《時を越えた探索/Dig Through Time》を使えるのだ。

しかしながら、ジェスカイと言えどこの恵まれたマナベースで3色に纏めてしまうのは勿体ないことだろう。

3色でまとめる場合のマナベースを考えてみよう。

2:《山/Mountain》
2:《島/Island》
2:《平地/Plains》
4:《神秘の僧院/Mystic Monastery》
4:《溢れかえる岸辺/Flooded Strand》
4:《血染めのぬかるみ/Bloodstained Mire》
4:《汚染された三角州/Polluted Delta》
1:《大草原の川/Prairie Stream》
1:《燻る湿地/Smoldering Marsh》


見ての通り、《汚染された三角州/Polluted Delta》から赤マナを持ってくるためには《燻る湿地/Smoldering Marsh》を持ってこなければならないデザインになっている。

このマナベースはジェスカイにしてはかなり手堅いものであるが、この時点で黒のマナソースが9もあり、これに1枚の《窪み渓谷/Sunken Hollow》を加えるだけでそれは14にまで数を増やすのだ。

新環境で3色で纏めることが勿体ないと言った意味が解っていただけたであろうか。

我々は黒ではなく、緑をタッチすることも検討していた。

《ドロモカの命令/Dromoka’s Command》と《棲み家の防御者/Den Protector》は非常に強力なカードであるが、結局のところは黒をタッチしたほうが多くの恩恵を得られる結果となったのだ。

黒をタッチすることの最大の利点は、《はじける破滅/Crackling Doom》や《黄金牙、タシグル/Tasigur, the Golden Fang》、そして《強迫/Duress》といった環境随一のカードパワーを誇る面々を採用できることである。

クリーチャーの枠は難なく決まった。

4:《ヴリンの神童、ジェイス/Jace, Vryn’s Prodigy》
2:《魂火の大導師/Soulfire Grand Master》
4:《カマキリの乗り手/Mantis Rider》
2:《黄金牙、タシグル/Tasigur, the Golden Fang》
1:《龍王シルムガル/Dragonlord Silumgar》
1:《竜使いののけ者/Dragonmaster Outcast》


革新的なアイディアは無いが、前回のプロツアーで使ったアグレッシブなタイプではなく、どちらかというとコントロールよりの仕上がりになっている。

《カマキリの乗り手/Mantis Rider》は依然として強力であるし、《黄金牙、タシグル/Tasigur, the Golden Fang》は数多く採用されたフェッチランド、ジェイス、軽量火力のお蔭もあって、いつでもプレイできるようになった。

どんな軽量除去をどれだけ採用するかが争点となったが、《乱撃斬/Wild Slash》は本体を狙え、変身後すぐにフラッシュバックを使用したジェイスをすぐに処理できる点に優れ、一方の《焦熱の衝動/Fiery Impulse》はこのデッキであれば3点火力として見なせ、《カマキリの乗り手/Mantis Rider》を即座に処理できる点で優れていたのである。

悩ましい選択ではあったが、結局は《乱撃斬/Wild Slash》3枚と《焦熱の衝動/Fiery Impulse》2枚のを散らして採用することにした。

《はじける破滅/Crackling Doom》は非常に強力で、4枚から減らすことはあり得ないだろう。

《はじける破滅/Crackling Doom》を4枚採用することは、残念ながら《ジェスカイの魔除け/Jeskai Charm》に割く枠が無いことを意味していた。

私はかねてより《ジェスカイの魔除け/Jeskai Charm》が非常に好みであったが、単体のスペックだけを見れば《カマキリの乗り手/Mantis Rider》や《はじける破滅/Crackling Doom》といった強力無比なカードを押しのけてまで採用されるほどのものでは確かであろう。

それでも、《ヴリンの神童、ジェイス/Jace, Vryn’s Prodigy》のフラッシュバック先として優秀なので、1枚は《ジェスカイの魔除け/Jeskai Charm》を採用することにした。

フェッチランドが何度も起動されるこの環境のデッキトップバウンスは、《死霧の猛禽//Deathmist Raptor》等の厄介なカードに対処し得る優秀な除去カードに成り上がるのである。

上の方で、このデッキはコントロールデッキ然として振る舞うと書いたが、コントロールデッキに見られるようなプレインズウォーカーやドローカードは目立って採用されていない。

その代わりと言ってはなんだが、4色目をタッチしたおかげで、《オジュタイの命令/Ojutai’s Command》と《コラガンの命令/Kolaghan’s Command》という強力なカードを同時に採用することができるようになった。

これらのカードは《ヴリンの神童、ジェイス/Jace, Vryn’s Prodigy》や《魂火の大導師/Soulfire Grand Master》と相まって非常に強力に働き、加えて《竜使いののけ者/Dragonmaster Outcast》でゲームを決めに行くプランを成立させてくれる。

ミラーマッチはリソースのせめぎあいになることが多く、《コラガンの命令/Kolaghan’s Command》で相手の《ヴリンの神童、ジェイス/Jace, Vryn’s Prodigy》を処理すると同時に、自分の《ヴリンの神童、ジェイス/Jace, Vryn’s Prodigy》を墓地から回収する動きが全くもって強力なのは疑う余地のないところであろう。

土地が6枚置けたら、後は計6枚の命令と《ヴリンの神童、ジェイス/Jace, Vryn’s Prodigy》のフラッシュバックを駆使しして、《竜使いののけ者/Dragonmaster Outcast》を場に残し続けるだけだ。

沸き続ける《竜使いののけ者/Dragonmaster Outcast》を処理しきることは困難だろうね。

《払拭/Dispel》の採用の増加を見越して、《時を越えた探索/Dig Through Time》を《宝船の巡航/Treasure Cruise》に変更することを検討したが、《払拭/Dispel》を採用するようなデッキには6枚の命令が効果的で、命令自体も《払拭/Dispel》の的となるのだから、より強力な《時を越えた探索/Dig Through Time》使おうという結論に至ったのだ。

相手の《払拭/Dispel》がこちらに効果的であるのであればという理由から、こちらも同じく《払拭/Dispel》を採用した訳だが、《時を越えた探索/Dig Through Time》、《強大化/Become Immense》、各種命令、《勇敢な姿勢/Valorous Stance》、《アブザンの魔除け/Abzan Charm》、《究極の価格/Ultimate Price》と、《払拭/Dispel》の対象には事欠かないことが分かる。

黒緑サクリファイスのようなデッキでさえも、《集合した中隊/Collected Company》が4枚採用されており、《払拭/Dispel》は相手の切り札とも言えるカードをいとも容易く打ち消してしまうのだ。

以下が完成したリストである。

クリーチャー:14
4:《カマキリの乗り手/Mantis Rider》
2:《魂火の大導師/Soulfire Grand Master》
4:《ヴリンの神童、ジェイス/Jace, Vryn’s Prodigy》
2:《黄金牙、タシグル/Tasigur, the Golden Fang》
1:《龍王シルムガル/Dragonlord Silumgar》
1:《竜使いののけ者/Dragonmaster Outcast》
 
呪文:20
2:《時を越えた探索/Dig Through Time》
1:《ジェスカイの魔除け/Jeskai Charm》
3:《乱撃斬/Wild Slash》
3:《オジュタイの命令/Ojutai’s Command》
4:《はじける破滅/Crackling Doom》
3:《コラガンの命令/Kolaghan’s Command》
2:《払拭/Dispel》
2:《焦熱の衝動/Fiery Impulse》
 
土地:26
4:《神秘の僧院/Mystic Monastery》
4:《溢れかえる岸辺/Flooded Strand》
4:《汚染された三角州/Polluted Delta》
4:《血染めのぬかるみ/Bloodstained Mire》
1:《平地/Plains》
1:《島/Island》
2:《山/Mountain》
1:《沼/Swamp》
1:《大草原の川/Prairie Stream》
2:《窪み渓谷/Sunken Hollow》
2:《燻る湿地/Smoldering Marsh》

サイドボード:15
2:《強迫/Duress》
1:《フェリダーの仔/Felidar Cub》
1:《宝船の巡航/Treasure Cruise》
3:《アラシンの僧侶/Arashin Cleric》
2:《影響力の行使/Exert Influence》
1:《竜使いののけ者/Dragonmaster Outcast》
3:《軽蔑的な一撃/Disdainful Stroke》
1:《払拭/Dispel》


サイドボードの《強迫/Duress》は、ミラーマッチや対コントロール相手に効果的で、《フェリダーの仔/Felidar Cub》は白緑系のデッキがサイドボードから《絹包み/Silkwrap》や《進化の飛躍/Evolutionary Leap》を投入してくるのを見越してのことである。

《消去/Erase》は《フェリダーの仔/Felidar Cub》と迷う選択肢であったが、6枚の命令とシナジーする《フェリダーの仔/Felidar Cub》を優先した。

《影響力の行使/Exert Influence》、《宝船の巡航/Treasure Cruise》、そして追加の《竜使いののけ者/Dragonmaster Outcast》と《払拭/Dispel》は、遅い展開や消耗戦で優位に立つための採用である。

《アラシンの僧侶/Arashin Cleric》と《光輝の炎/Radiant Flames》は、赤系とのマッチアップを非常に楽にしてくれるが、メインの段階から有利がついているので、あくまで念押しの意味が強い。

《軽蔑的な一撃/Disdainful Stroke》はアブザンやコントロール相手に厳しく刺さるカードで、《精霊龍、ウギン/Ugin, the Spirit Dragon》のような絶対に着地を許したくないカードは、このカードで確実に対処したいところだ。

我々の見解では、ダークジェスカイと緑白系のデッキが二大勢力で、アタルカレッドがこれに続くだろうと考えていた。

強力なカードを詰め込んだ4色デッキは他にも多くあるだろうが、上記の3つのデッキが最有力だと疑わなかったのは、どのデッキも単体で強く、弱点らしい弱点が存在しなかったためである。

緑白系のデッキだけ《カマキリの乗り手/Mantis Rider》と《ヴリンの神童、ジェイス/Jace, Vryn’s Prodigy》に対処するために《絹包み/Silkwrap》を採用せざるを得ないが、それを補って余るほどのパワーと安定感から、プロツアーでも多くのプレイヤーが採用するものだと踏んでいた。

赤系のデッキと緑白系のデッキを相手取る際には、ダークジェスカイ側はリソースを重視するコントロール寄りの展開を目指すことになる。

大変異だけが厄介だが、各種命令と《ヴリンの神童、ジェイス/Jace, Vryn’s Prodigy》、そして《時を越えた探索/Dig Through Time》がもたらすアドバンテージが勝利に大きく貢献してくれることだろう。

赤系のデッキを相手にする場合は、お互いのリソースの削り合いに勝利することで、そのままウィンコンディションを保って勝利することができるだろう。

いくら赤系のデッキと言えど、火力は軽いものが4~6枚程度と《極上の炎技/Exquisite Firecraft》が2枚程度に限られるであろうから、火力で本体を焼き切られることは無いと踏んでいる。

火力を警戒するよりは、コンボに一瞬で葬られないためにも除去を構えることが先決だと言えよう。

その点我々のデッキには《はじける破滅/Crackling Doom》、《ジェスカイの魔除け/Jeskai Charm》、《払拭/Dispel》といったコンボに強いカードが多く採られているため、マッチアップ自体はかなり有利であるし、《魂火の大導師/Soulfire Grand Master》か《アラシンの僧侶/Arashin Cleric》を命令で回収できれば、それだけでその差は覆らないものになってしまうはずだ。

Team Pantheonの多くのメンバーがこのデッキをプロツアーに持ち込むことになるだろうが、《ヴリンの神童、ジェイス/Jace, Vryn’s Prodigy》と《はじける破滅/Crackling Doom》の共存はやはりマナベースに対して一抹の不安が残る。

それでも、調整を重ねたマナベースには自信があるし、土地事故さえ潜り抜けることができればそのデッキパワーは折り紙付きだ。

ここまで中々ぱっとしない成績が続いていたが、今回こそはという意気込みである。

デッキは最高のものに仕上がってるよ。



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